錯綜-Vol.1
「トラウマ」
突然だけど、みんなヘドバンは好きですか?好きですよね?
しかし、みんな大好きヘドバンの危険な一面を、俺の体験から教えようと思う。
時を戻そう。あれは高校2年の春の出来事である。
初めて俺がライブハウスでライブをした時のことだ。
振り返ってみれば、自分のパフォーマンスはあまりに酷かった。
しかしそこで俺は、衝撃的な出会いを果たしたのだ。
その出会いとは、嵐のように激しいパフォーマンスをする3人組のロックバンドとの出会いだった。
「激しく動いてたら超カッけえじゃん!」
無垢な俺はその姿に心を奪われた。
そこからは早かった。というか早すぎた。
スタジオ練習の時、俺は狂ったように頭を振り回す。
もはや演奏どころではないのに。
しかも、誰も止めはしなかった。
「お前くそかっけえじゃん!」
「もっとやってこうぜ!」
ボーカル駿介の言葉に胸を打ち、さらに俺のヘドバンは加速した。
そして迎えた高校の文化祭。
俺はこの日のためにバンドを組み、必死で練習してきた。
盛り上げたい、輝きたいという一心で。
俺たちの出番、ステージに立った。
俺は暴れた。
とにかく暴れた。
テンポを気にすることなく、全身で「俺」を表現してみせた。
盛り上がる歓声。
高まるボルテージ。
俺を照らすスポットライト。
俺はこの高校の頂点に上り詰めた思いだった。
しかし、後に遺ったのは、首の違和感と周囲からの冷ややかな目だった。
嘘だろ。。。
こんなはずじゃ。。。
気が付いたら、俺は親の車で病院へと向かっていた。
「ムチ打ちですねえ」
医者の無慈悲な言葉が俺の無垢な心を殺した。
それだけじゃない。
周囲の冷ややかな目をなんとかせねば。
俺はステージに立って、校内の王者になったはずなのに。。。
「ユージくん大丈夫?」
「いつもよりすごく元気そうだった!」
「普段全然喋らないから、なんか保護者みたいな気分で見ちゃった!」
そうか。
そういえば俺はインキャだった。
こうして俺の黒歴史は刻まれたのである。
最初の質問の答えについてだが、俺は断じて「ヘドバンは好きではない」。
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